大橋俊雄校注『一遍聖絵 聖戒編』岩波文庫、2000年、2024年第12刷
一遍聖の伝記を初めて読む。もっと早く読むべきだったと思う。もっとも、古文であるからそれなりの知識と経験が必要なのではある。最澄、空海、法然、親鸞と日蓮は少し読んできたが、栄西、道元そして一遍は断片的だった。良寛は漢詩集や和歌集を読んだことがある。『一遍聖絵』を読み解くための準備をしたくなったが、解説にある『国華』などを入手するのは難しそうである。
その解説の始まりが面白い。「一遍聖は、承久の乱18年後の延応元年(1239)に生まれ、文永11年(1274)成道し、遊行回国すること15年、正応2年(1289)歿した、鎌倉中期の僧であった。同時代の人には日蓮や忍性・良忠がいた」(p.145)。
鎌倉時代の画期は承久の乱(1221)と文永の役(1274)と弘安の役(1281)である。一遍の生きた時代は外圧による混乱の時代である。『一遍聖絵』は網野善彦『日本中世に何が起きたか』(角川ソフィア文庫、2017年)で少し触れていたので、興味が湧いたが、いつものようにそれっきりになっていた。今年の夏の岩波文庫の一括重版がよい刺激になった。
『一遍聖絵』の編者は一遍の異母弟の聖戒である。スポンサーについては諸説が挙げられていた。訓めればよいとした読み方がダメなことは古田島洋介『日本近代史を学ぶための文語文入門』(吉川弘文館、2013年)で学習したばかりである。活用を古語辞典で確認するのも久しぶりな気がする。
絵は白黒であるのはやむを得ない。デジタルライブラリーを見ればよいのである。筆記体が読めるようになるにはまだ執念が足りないようである。
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