バロックとは何かを考えるには異なるものを持ってくるのがよい。そこで、ルネサンスと比較してみたが、絵画を通して一般論を語るのは難しかった。しかし、あとはモダンになるので、比較そのものが意味をなさなくなる。そうなると、ゴシックという言葉が浮かんできた。古代ローマ文明が滅んだあと、中世ヨーロッパの農民にキリスト教が普及するまで何世紀もかかっている。12世紀から15世紀までのフランス北部を中心とする大聖堂の建築様式を表すゴシックも、後世の人が使う環境によって多義的になっていくのはしかたがない。解釈の中にしか存在しない言葉なのだ。様式というのは見方であるから、様式の違いがわからない人には見えないものなのだ。
酒井健『ゴシックとは何か 大聖堂の精神史』ちくま学芸文庫、2006年、2023年第7刷
書誌情報
講談社現代新書、2000年を文庫本化した。
文庫版あとがきでケン・フォレットの『大聖堂』が紹介されていた。現在手に入るのはSB文庫版の3巻本である。しかし、この大河小説を読むだけのこころのゆとりはなさそうだった。
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