『パリ歴史探偵』(2020)

読書時間

宮下志朗『パリ歴史探偵』ちくま学芸文庫、2020年

しかし、宮下志朗氏の『モンテーニュ』を読むはずが、鹿島茂氏の『『パサージュ論』熟読玩味』(1996年)のせいでとんだ寄り道となっている。そして、もう少し寄り道しそうなことも予感している。人生はままならないが、読書もままならない。自由意思は一定の制約のもとで成り立つかもしれないが、読書に関しては意思に反して別なものを読もうとしてもできないでいる。階級社会のもとで私の読書は自分の身分をはみ出しているので、自分が考えるクラスターに収束しそうもなく、パラグライダーの着地点に辿り着けそうもない。要するに横風で流されているうちに高度を失っている。エンターテインメントを読んで楽しく老後を送った方が良いと内なる言葉が囁いている。

新型コロナのせいでパリに行くことはないだろうが、私が昔に見たパリはそれこそ半世紀近く経っている。この本が書かれてから20年間のパリの変化は相当なもののようで、何度も宮下志朗氏が嘆いているが、変わるものは変わる。鴨長明によって無常を知った私も京都の変貌を嘆くよりは、無常であることに自覚的でありたいと思っている。

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