『論文の書き方』(1959)その2

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清水幾太郎『論文の書き方』岩波新書、1959年、2020年第100刷

書くということ。

清水幾太郎が「見た通り」の世界と「思った通り」の世界のことを書いている。「眼に見える世界は、最初、空間的並存状態として現われるほかない」(P105)。自分のいる部屋を見廻すと、デスク、椅子、灰皿、電気スタンド、窓、ベットがあり、「これらの全体が一度に眼に入って来る。これが、「見た通り」の世界である」(P105)。

同じように、「思った通り」の心の世界も「いろいろな気持が私の心に同居している」(P106)。

「書くというのは、空間的並存状態にあるものを時間的継起状態へ移し入れることである」(P109)。

自分を捨てない。

清水幾太郎が文章を書くにあたり「一切放下」をいう。つまり、権威ある言葉を捨てろと説く。

「権威ある言葉を捨てた後になお何か残るものがあるなら、その残ったもので勝負しよう。裸一貫になるというのは、自分だけが残るということである。自分だけは捨てないということである。笑われても、軽く見られても、自分の言いたいことだけを言おう。味方がひとりもいなくても、自分だけで攻めて行こう。正直に書く、とか、ありのままに書く、とかいう教訓はこの意味で役立つべきものである」(P155)。

結局、「文体には深く思想が染み込んでいる」(P156)。
「文章を書くというのは、思想に秩序を与えることであるというに尽きている」(P157)。

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