カルチャーラジオ 文学の世界 文庫で味わうアメリカ短編小説を聴いてみました。
都甲幸治(とこうこうじ)氏がアーネスト・ヘミングウェイの『白い象のような山並み』を取り上げた回では、スペイン語を英語に翻訳したような設定という話が面白かった。とにかくヘミングウェイの本にはフランス語やスペイン語がよく出てきたのを思い出しました。本人達は英語で話していますが、設定はスペインを旅行している場面だったりすると、周りはスペイン語で話しています。登場人物の片方はスペイン語を知らないので何を話しているか分かりませんが、もう一方の登場人物はスペイン語ができるので、スペイン語で注文したりします。現地の人々はスペイン語で話しているのですが、それが英語に翻訳されているので、スペイン語が分からなくても読めるようになっています。ただ、スペイン語を知らない女性は男に何と言ったのか聞いているのです。私もスペイン語もuno、dos、tresくらいは何となく分かるので、男がスペイン語で注文したことくらいはわかります。スペインの女性がスペイン語で話す内容は英語に翻訳されていますが、主人公の女性はスペイン語が分からない設定なので、小説の中でも忠実に演じています。日本のお芝居で外国が舞台だと皆んな日本語で話していますが、そこにその国言葉を知らないはずの日本人を登場させても言葉が通じてしまいますが、ヘミングウェイはそんなことをしません。
翻訳で読んでいる人は分からないと思いますが、For Whom the Bell Tollsもスペイン語の会話が出てきたのは記憶にあります。A Moveable Feastも勿論パリの話ですからフランス語が出てきます。ヘミングウェイは多言語の世界です。
ヘミングウェイのあの短い会話がどこまでも続くのを読んでどんなシュチュエーションになっているのかを的確につかむのは存外むずかしいことです。小説は登場人物達の心の動きを読み取らなければつまらないのですが、彼の削ぎ落とした文体はそう簡単に読み取らせてはくれません。そう言えば小説を暫く読んでないことに気がつきました。長編は無理そうですが、短編ならと思います。この聴き逃しを聴いてみてからでも遅くないと思います。なにしろ文庫を買えば買ったで始末に困るでしょうから。
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