『翻訳とは何か 職業としての翻訳』(2001)

読書時間

山岡洋一『翻訳とは何か 職業としての翻訳』日外アソシエーツ、2001年、2003年第3刷

翻訳とは因果なものである。このところ翻訳に関して少しばかり本を読んでの感想である。

職業翻訳家の山岡洋一氏(故人)の本の中から切り取った言葉が発端だった。

「翻訳は対象を制御できないが、文書作成なら対象を制御できる」(P8)。

これは、1980年代半ばという機械翻訳がブームになっていた時代に、パソコン用ソフトのマニュアルについて、機械翻訳より操作マニュアルの文書の自動化の方が簡単だという主張の根拠のことだった。

この議論が正しいかどうか分からない。操作マニュアルは操作記録から再現されて作られるので、自動化されたが、人間が理解するための、操作の目的などの説明が自動で付加されるという話は聞いたことがない。機械翻訳についても下地は機械翻訳を使うのは当たり前になったけれども、そのまま使うにはどうも気がひける。明らかに機械翻訳の文法で書かれているので、日本語としては意味不明なものが残ったりする。

自動化の主張の根拠になった話そのものをみていく。翻訳は対象を制御できるかといえば、無理であろう。翻訳不能なものもある。文書作成はAIを使った小説がでるようになったので、制御可能になったと言えるのだろうか。ダイジェストは機械作成されるので、その意味でレベル感が問われなければならない。AIを使った作成文書をAIが翻訳できなければ勝負が付きそうなものだが、囲碁だの将棋だのと違って勝ち負けの判定が難しい。判定するAIというものの設計の話が聞きたいものだ。

新井素子、宮内悠介ほか人口知能学会編『人口知能の見る夢は AIショート ショート集』文春文庫、2017年

佐野理史『コンピュータが小説を書く日 AI作家に賞は取れるか』日本経済新聞出版社、2016年

翻訳論に入る前に時間切れになった。まあ、通勤時間しか割けないので仕方ない。

#語学 #翻訳

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