『書淫行状記』(1935)のお話

読書時間

齋藤昌三『書淫行状記』書物展望社、昭和10年

齋藤昌三が装幀した本を読む。このシリーズも三冊目となると種ならぬ本が尽きるのである。書痴齋藤昌三の本は戦前に出たので戦災で失われたものも多いであろう。齋藤昌三の本はもう持っていないが、齋藤昌三が装幀した本はまだ手持ちがあるので、機会があれば紹介したい。

さて、この三冊目の少雨荘エッセイ集も内容は雑多なものである。蔵書票の貼り方が書いてあったのでメモしておく。蔵書票は見やすいところ、表紙の裏の右上に貼るのがよい。絵や柄が見返しと一体となっている場合は、それ以外の場所を探せとある。この本は見返しに柳田泉の書があり、表紙の裏に写り込んでいた。裏表紙の裏側に前の所有者の裏田書架の蔵書票が貼ってあり、その上にお馴染みの田村書店のシールがパラフィン紙を止めていた。このパラフィン紙を破って表紙を見たのは『銀魚部隊』(昭和13年)だった。

後書を読む。

新菊版にしたことについては『書痴の散歩』(昭和7年)、『書國巡禮記』(昭和8年)と並んで三部作として見たかったからとある。装幀は漆塗りを試みた。研出布目塗にして万全を期している。背文字も漆で書くべきところを箔押しにしたのは、三部作を意識して、三部の併架を考えたからという。

注)研出布目塗(とぎだしぬのめぬり)とは、表紙に糊漆で布を着せ、布の上に下地の漆を塗り、さらに上塗りした漆を炭で研ぐことで下地を浮かび出したものの上に透明な漆を上塗りする技法である。漆塗の工芸品ならともかく本の表紙をその技法で作るのは聞いたことがない。

タイトルは趣味が悪いと言っておく。

著者検印が蔵書票になっているところが気に入っている。

#蔵書票 #齋藤昌三

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