『漢字』(1970)その2

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白川静『漢字 ー生い立ちとその背景』岩波新書、1970年、2008年第31刷

風に関するイメージは色々ある。宮崎駿の『風に谷ナウシカ』でメーヴェで飛ぶナウシカが感じる風、パラグライダーで下降する時のキャノピーを張る向かい風、国木田独歩の『武蔵野』の林の木を揺する夜の風、山小屋で聴く風雨の子守唄、J.G.バラードの『強風世界』の何もかも吹き飛ばす風だったりする。

谷から吹き上がる風が、暑い尾根歩きで火照った体に気持ち良かったり、風が自然の息吹と感じるのは、吹いたり止んだりするからだと思う。ボッティチェリが描く「ビーナスの誕生」で風の神が口から吹く風でビーナスを乗せた貝を陸地へ送り届けるも風のイメージだ。

「人々は風土の中に生まれ、その風気を受け、風俗に従い、その中に生きた。それらはすべて、「与えられたるもの」であった。風気・風貌・風格のように、人格に関し、個人的と考えられるものさえ、みな風の字をそえてよばれるのは、風がそのすべてを規定すると考えられたからである。自然の生命力が最も普遍的な形でその存在を人々に意識させるもの、それが風であった。人々は風を自然のいぶきであり、神のおとずれであると考えたのである」(P26)。

白川静は風を神とみる。四方に風の神がいるのはギリシャ神話も同じである。「ビーナス」を陸地へ吹き寄せるゼフィロスは西風の神だ。

和辻哲郎が『風土 人間学的考察』(1935)で3つの文化圏として、モンスーン、砂漠、牧場を取り上げ、風土が人間と文化に影響することを書いた。「風」という漢字からなる熟語は面白い。風光などは「風光明媚」という四字熟語としてしか使わないが、風景とlandscapeを比べてみても、landscapeに風は出てこない。

#白川静

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