エルンスト・ハルニッシュフェガー、松本夏樹訳『バロックの神秘 タイナッハの教示画の世界像』工作舎、1993年
翻訳者の松本夏樹氏のお話を聴く会があった。まあ、こんなこと企画するのは、Le Petit Parisienの石川氏くらいしかない。
僅か2メートルほどの教示画の翼扉の表と裏、そして主画面に描かれたキリスト教世界の絵解きが2時間経っても終わる気がしない。松本夏樹氏にスライドで一通り見せていただいたが、解説がないままに、庭の植物や鉱物、レリーフなどが映されていく。
扉絵に、天上で待つキリストに祝福される人々の魂が雲の上に何段も列をなしているのが、女性であることが印象的であった。ドイツ三十年戦争は、戦争で男達が死んでいない世界をもたらし、女性が中心となって生きていく世界を作ったのだろうか。
主画面の旧約聖書と新訳聖書の世界が左右に配置され、定規とコンパスで計算された幾何学的構成のなかに配置された人物、動物や植物の数々、中心となるマリアの真珠、一つ一つを読み解いていくためには、聖書の知識以外にキリスト教カバラ、錬金術など足りないことばかりだ。
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