ジョン・ブルックス、須川綾子訳『人と企業はどこで間違えるのか?』ダイヤモンド社、2014年
帯を見たら買いたくなる。もっもと、昔の部下の推薦本であるため、捨てられる心配はないので玄関に堂々と置いている。
原題はJohn Brooks『BUSINESS ADVENTURES』(1959年〜1969年のエッセイのアンソロジー)だ。訳者のあとがきに『ニューヨーカー』誌に掲載された12の物語から「アメリカ連邦税法、および金本位制をテーマにした章を抜いた「10の物語」」を収録したとある。
第5章 コミュニケーション不全ーGEの哲学者たち
電機メーカーが主導した価格協定と談合入札を巡る事件をとりあげ、大量の幹部の逮捕者を出したGEのトップが罪を問われなかった訳に切り込んだ。
著者の手法はこうだ。「数年前、私は政府印刷局が発行した「第87議会上院司法委員会の反トラスト・独占小委員会における公聴会記録」(2巻組)を手に入た。1459ページに及ぶその公文書を詳しく読むと、経営者たちの言葉の意味が見えてきた」(P181)。
ジョン・ブルックスはジャーナリストである。新聞では報道されない訳を読者が知りたがっていることをよく知っている。
しかし、コミュニケーション不全は酷いものだった。「倫理規程と反トラスト法を説くコーディナー会長の訓辞は、部下たちにとっては馬耳東風であり、ルールは守られなかった。パクストン社長は、一つの会話についての正反対の釈明をした部下について考えをめぐらせ、どちらも嘘をついたわけではなく、コミュニケーションがうまくいかなかっただけだと主張した。GEの哲学は高邁な域に達していたようだが、コミュニケーションのレベルはかくも低いものだった」(P206)。
第3章 ゼロックス、ゼロックス、ゼロックス、ゼロックス
余りにも有名なパルアルト研究所を生かせなかったゼロックスの物語だ。
ビジネス書でこんなに味のある本は見たことがない。というわけで、時々出掛けに玄関の本棚から抜いていくのだった。そのうちまた玄関の本棚を取り上げてみよう。
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