藤井貞和『構造主義のかなたへーー『源氏物語』追跡』笠間書院、2016年
本書は『源氏物語』を巡る研究・小説・批評からなる。
藤井貞和氏の意図ははしがきで披露されている。「<構造主義とは何か>を、レヴィ=ストロース氏、およびフーコー氏に沿って、本書はかなり説き及んでみた。<構造主義>以後の世代の手に本書がわたるとして、この書を支える意図は何か、時代や歴史のなかで物語が読まれる理由は、そして物語じたいが産出される真の理由はどこにあるか、それらのモチーフ群をも含めてぜひ手わたしたいように思う」。
目次を見ると全体像が見えることが良書であるとしたら、本書は第1章の書き下ろし以外は既出のため、部立てもない状態だ。本書のタイトルとなった講義録が第15章に収まっている。
第1章 構造への序走
第2章 比香流比古(小説)
第3章 源氏物語というテクストーー「夕顔」巻のうた
第4章 赤い糸のうた(小説)
第5章 性と暴力ーー「若菜」下巻
第6章 橋姫子(小説)
第7章 千年紀の物語成立ーー北山から、善見太子、常不軽菩薩
第8章 源氏物語と精神分析
第9章 物語史における王統
第10章 世界から見る源氏物語、物語から見る詩
第11章 源氏物語の分析批評ーー「語る主体」への流れ
第12章 物語論そして物語の再生ーー『宇津保物語』
第13章 『源氏物語の論』『平安文学の論』書評
第14章 国文学のさらなる混沌へ
第15章 構造主義のかなたへ(講義録)
ということで、第1章以外はどこから読んでもよい本であろう。お急ぎの方は第15章へ飛んでいけばよい。
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