80「貸本屋の午後」千宗室

ひととき

ひととき 2016年06月号の千宗室さんの京都(みやこ)の路地(こみち)まわり道は「貸本屋の午後」というタイトルだった。家元が小学生というと50年程前の話になる。信号のない堀川通り渡るのが冒険だった頃だ。堀川鞍馬口を入ったあたりにあった貸本屋を訪ねた理由は分からない。陽射しが穏やかな午後だった。店内は外光が届かず、饐えた紙の匂いがする。表紙が取れ掛かったり煤にまみれたりした本を見て、逃げるように古本屋を出たという。そこにある死に瀬している本に怯えたのだった。

それ以来、貸本屋を利用したことはないという。「人生の忘れ物の一つだ」。

私も貸本屋を利用したことはない。私の周りにあったのかも覚えていない。だから、谷沢永一先生の話を読むと楽しくなるのだが、どうも家元とは合わなかったようである。

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