もののあはれ

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本居宣長、子安宣邦校注『排蘆小船・石上私淑言――宣長「物のあはれ」歌論』岩波文庫、2003年、2010年第3刷

肝心の「物のあはれ」はどうなっているのか。

『排蘆小舟』で本居宣長が「物のあはれ」概念に触れているのは、頭注を含め二箇所だと子安宣邦氏が書いている(解説(338頁)及び注52)。

「宣長における「物のあはれ」概念は、古書の用例によって「あはれ」概念の考証的再構成を試みた小論『安波礼弁』を経て、『紫文要領』と『石上私淑言』とにおいて、歌物語論の最も重要な構成概念として成立することになる」(解説338頁)。

こういうとき、索引のない本は面倒だ。『排蘆小舟』は前夜で、『石上私淑言』で「物のあはれをしる事は、紫文要領にもくはしくいへり」(179頁)とした。

「物語論『紫文要領』と和歌論『石上私淑言』により「物のあはれ」概念が成立したと子安宣邦氏はいっているのだ。

「物のあはれ」は直接には解説されない。『紫文要領』では「物の哀れ」が随所に語られるが、「モノの哀れ」は私からすれば「コトの哀れ」でもよい。「物のあはれ」という言説で源氏物語や和歌を語ることにいつまでも付き合う気はしない。宣長の文学概念を通してみることになるからだ。

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