新選組研究の回顧と展望

断片記憶

『歴史読本 2004年3月号』を神保町で手に入れて、中村武生氏の「新選組研究の回顧と展望」を読む。爽やかな読後感を覚えた。「新選組」の読み方が分かる論考である。

大河ドラマ「新選組!」の年に書かれたので少し古くなったが、「新選組」を読む者にとっては重要な指摘がされている。

「戦後の日本史研究者はまったく新選組や池田屋事件の研究をしてこなかった」という。その理由を新選組が「負け組」であったことと良質な関係史料が現存していないことで、研究する「意味」が見出せなかったからという。

その上で、”最前線”研究者の成果について歴史学者が利用してこなかった理由を述べたところが読み応えがある。一言で言えば史料批判ができていないということだ。伝聞記録である「風説留」の扱いにも言及している。

(1)不充分な史料批判
(2)池田屋事件の第一報の誤り
(3)古高俊太郎の評価をめぐって
(4)頼りすぎた五つ「古典」
(5)刊行史料集の問題点
(6)問題意識の欠如

「風説留」は宮地正人氏の『歴史のなかの『夜明け前』』(2015) を参照のこと。

そして、最近の日本史研究者の新選組の研究として「非公開の小島資料館所蔵の近藤勇の書簡の検討を中心とした」松浦玲氏の『新選組』(岩波新書、2003年)や家近良樹氏の幕末会津藩研究を取り上げている。

その後、中村武生氏は『池田屋事件の研究』(講談社現代新書、2011年)を出している。

明治維新を巡る政治状況について、家近良樹『江戸幕府崩壊 孝明天皇と「一会桑」』(講談社学術文庫、2014年)あたりから読んでみたいと思う。

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