『近世思想家文集』(1966)

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かつて、家永三郎が岩波書店の日本古典文學大系の『近世思想家文集』の解説に「近世思想界概観」として「かつて中江兆民は「我日本古より今に至る迄哲学無し」と言った。今日、諸大学には西洋哲学史・中国哲学史・インド哲学史といった講座が設けられているが、日本哲学史という講座はどの大学にもないようである。日本哲学史という概念が市民権を得ることができず、これに代わって日本思想史という名による学問が広く行われているのは、日本の特殊性をよく象徴する現象ではなかろうか」と書いていた。1966年の話である。

現在の状況をインターネットで概観してみよう。キーワードは日本哲学史・日本思想史・日本倫理思想史といったところか。

(日本哲学史)

京都大学大学院文学研究科日本哲学史研究室

(日本思想史)

東北大学大学院文学研究科日本思想史学研究室

(日本倫理思想史)

東京大学文学部・大学院人文社会系研究科倫理学研究室

他は省略

こうしてみると、日本哲学史について京都大学が、日本思想史については東北大学が、そのものズバリの研究機関となっており、東大以下は日本思想史・日本倫理思想史をテーマとした講座があるという状況だ。少しは市民権を得たのだろう。

しかし、書籍に関しては、この日本古典文学大系も絶版になっており、伊藤仁斎の『童子問』岩波文庫(1970年)も品切である。

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