『高僧伝(1)』(2009)

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慧皎『高僧伝(1)』岩波文庫、2009年

1.慧皎(えこう)について

『高僧伝』の著者の慧皎(南斉の建武四年(四九七)〜梁の承聖三年(五五四))については、唐初の道宣(どうせん)の『続高僧伝』による。会稽上虞の人であり『高僧伝』十四巻を著すとある。南朝の人であり北朝の北魏等の情報が不足してるといわれる。南北間の往来は制限されていたが、宮崎市定氏によると仏教僧侶の中立性から行き来はあったとされる。船山徹氏は北魏の太武帝の廃仏や関禁による影響を考えている。

2.『高僧伝』の範囲と仏教の中国初伝

『高僧伝』が対象とする範囲は、「漢の明帝の永平十年(六七)に始まり梁の天監十八年(五一九)に終わるまで、凡そ四百五十三載」、立伝されているのは、「二百五十七人、又た傍出附見するもの二百余人」(序録)とある。

摂摩騰(しょうまとう)伝と竺法欄(じくほくらん)伝に記す仏教の中国初伝を永平十年としていいるためである。従って、晋の鳩摩羅什は出てくるが唐の玄奘三蔵は含まれない。

3.訳注について

高麗版再雕(さいちょう)本を底本に訳注したある。実際には増上寺所蔵の重要文化財であるため、韓国での洋装本高麗版と宮内庁蔵開元寺版の写真複写の二種類を参照したという。

4.『高僧伝』を読む意義

仏教の中国初伝よりおよそ450年間の沙門の伝記の集成である『高僧伝』の現代日本語訳を読む意義は何だろうか。インドに起因し、東アジア文化圏に拡がった仏教文化を概括するために、個々の経典だけでなく、翻訳僧を含む沙門の事績を概観できることはありがたい。天竺→中国→朝鮮→日本への抽象的な伝播を具体的な人の事績で肉付けする天竺→中国編である。

5.付記

船山徹氏による訳者解説が一巻にあり、73頁を費やしている。私ははこれを読むために購入した。二巻から四巻を読むとしても当分先のことになる。

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