『藤原定家全歌集』赤羽淑編著

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赤羽淑編著『藤原定家全歌集』(笠間書院、1978年)

「もしこの抄譯や傳で興を唆られた人は、必ず勞を厭ふことなく原典によって、その奔放自在の作を味倒して欲しいと切望する次第である。他のすべての作も、『拾遺愚草』全巻通讀するなら、讀者個個の新しい解釋や感銘も生まれることであろう。」(塚本邦雄「藤原定家論」)によって、この赤羽淑編著『藤原定家全歌集』を手に入れたらしい。

赤羽淑氏が「定家家風の分析に用立てるために、全句索引を作ってタイプ印刷にしたのが、そもそものこの仕事のはじまりである」(後記)。本文篇は手書きだが、読みづらいわけではない。むしろ「漢字はさしつかえのないかぎり当用漢字を用いたが、仮名遣・異体字・踊り字・繰返し記号などすべて原本のまま」という配慮によって読みやすい。万葉集はそのまま読めという梅原猛氏に従って万葉仮名で読んでいるので、和歌の表記はいつも気になるのである。

『拾遺愚草 上』二見浦百首 文治二年 円位上人勧進之詠百首和歌 侍従

「見わたせは花も紅葉もなかりけり浦のとまやの秋の夕暮」(135)

この歌がこんなに早く登場していることに驚く。ほとんど読み飛ばしかねない歌の中に宝石が混じっている感じと言えよう。もしかしたら我々が深読みしているのか?

歌番号は4603をもって終る。

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