旅する読書

断片記憶

管 啓次郎『本は読めないものだから心配するな〈新装版〉』(左右社、2011年)

僕は猿子眠をしたことはない。寒さを凌いで朝を待つためのテクはエピソードとして学んだ。厳冬期の剱岳にシュラフを持たずに来た登山家の話しは岳人で読んだ。猿子眠は立てた両膝を抱え込んで眠る。熱を逃がさないための工夫であり、新聞紙など腹に入れるなどの応用も効く。

著者は宮本常一の自伝『民俗学の旅』(文藝春秋、1978年/講談社学術文庫、1993年)から学んで実践した。しかし、手がほどけて横になって眠り見事に風邪を引いている。なぜ真似したくなったのか。宮本常一のエピソードがイメージとして記憶されたことによるのだろう。

僕も登山家と何度か山行を共にして、寒さを実感したことで記憶も鮮やかに残る。冬の東沢渓谷で焚き火にあたる顔は火照るが、背中は寒さが厳しい。どれが寒さに耐える衣服かを経験から学んできた。3月の谷川岳の天神尾根に雪洞を掘って寝たときは、やはり寒くてよく眠れなかった。夏の尾白川を遡行し、黄蓮谷出合の手前にツェルトで寝た夜の寒さが思い出される。

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