同人雑誌なるもの

断片記憶

同人雑誌の人間関係について大岡信が「僕たちが二十歳前後のころの関係と今の若い人のと較べただけでも、もう随分違っているように感じる」と対談の中で喋ってから(対談 大岡信・高階秀爾「サンボリスムと遊び 天心における西洋と伝統」(1976.3.31)40年が経過したが、私はその間、同人雑誌なるものを手に取ることはなかった。たまたま、古書肆右左見堂のカウンターに置いてあった同人雑誌を手に取った。

『綜合文藝同人 右左見 2016年冬号 第1号』にヨネザワエリカ氏が「歴史に向き合い現在をつくる」を書いている。玉ノ井や鳩の街の花街としての歴史は昭和とともに終わり、平成には平成の東向島がある。もっとも鳩の街の半分は向島だ。花街だった面影はなく、現在の街があるだけだ。私も現在の街に生きている。時折、百花園の散歩がてらに「玉ノ井」を冠したカフェに行ったり、鳩の街の古書肆に顔を出す。年間パスで向島百花園の四季を楽しんでいる。過去は本の中にしかなく、それは読んでいる我々の脳のなかでたまたま生じているだけだ。我々は常に現在を生きることしかできない。

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