マーシャル・マクルーハン、エリック・マクルーハン、高山宏監修・序、中澤豊訳『メディアの法則』NTT出版、2002年
久々に段ボール箱を漁っているうちに出てきた。マクルーハンの最後のメッセージ 待望の邦訳と帯にある。メディアは広義にとって、人工物も含む。あらゆるメディアは4つの副作用である「強化」「衰退」「回復」「反転」のテトラッド(Tetrad)の形式で読み解かれるという。
この方法論は演繹法的ではない。帰納法的である。ベーコン、ヴィーコと繋がる経験論の書である(p.7、「はじめに」でエリック・マクルーハンが明らかにしている。)。
「中世スコラ学がわからなければならない。たとえばウンベルト・エーコの『薔薇の名前』(1980[邦訳=東京創元社、1990])の世界なのだし、意外にわかるかもしれないが、ベーコン、ヴィーコとつらなる線は日本の哲学界にとっては、一時のライプニッツより以上に苦手かもしれない」(p.xxi、序、高山宏)。
高山宏氏の見立は正しい。山内志朗氏の『中世哲学入門』(ちくま新書、2023年)に頭を痺れさせている身としては、バロックの哲学という見取図を手に入れたと思っていたが、マクルーハンの『メディアの法則』の位置付けには驚くしかない。中世哲学からライプニッツを経て現代哲学へという流れではなく、ベーコン、ヴィーコ、マクルーハンの三巻で現代に戻れるのは都合がよすぎる。
注)
檜垣立哉『バロックの哲学』岩波書店、2022年ではヴィーコに言及がない。松岡正剛氏はヴィーコはバロックだといっている(千夜千冊874夜)。ついでにメモして置くのだが、『新しい学』の解説で清水幾太郎が表紙の絵の図像学に言及がなかったと書いている。
フランシス・ベーコン『ノヴム・オルガヌム(新機関)』桂寿一訳、岩波文庫、1978年
松岡正剛の千夜千冊874夜のジャンバティスタ・ヴィーコの『新しい学』清水純一・米山喜晨訳(「世界の名著33」所収)中央公論社、1979年
https://1000ya.isis.ne.jp/0874.html
そして、The New Scienceという副題をもつ本書が第三巻であるとエリック・マクルーハンが書いているのである(前出)。
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