鈴木虎雄訳解『玉台新詠集(上)』岩波文庫、1953年、1983年第7刷
1.例言を読む
岩波文庫の『玉臺新詠集』は明の崇禎年間(1622〜44)に蘇州の蔵書家の趙均が所蔵していた『玉臺新詠』の宋版(陳玉父本)を重刻したものを、我国で文化三年(1806)に復刻したもので、鈴木虎雄が入手し底本にしたと例言に書いてある。
『玉台新詠』とは何かについては、鈴木虎雄が『四書全書提要』より2項を妙出したものを付けている。漢から梁に至る艶詩等を編纂した詩集である。なお、樋口泰裕氏による翻訳「四書全書総目提要 玉台新詠 訳注」があるので、これを読むことになる。
2.インターネットで調べる
古書の場合、底本は重要である。そこで、インターネットで検索すると植木久行氏の論文が2つ見つかったので読むことにした。植木久行氏は古典中国文学者で弘前大学名誉教授である。
植木久行氏の「明代通行『玉台新詠』本の解題」(1983)によると、趙均が批判した徐陵撰『玉台新詠』十巻の明代の本に善本は乏しいとされる。「しかし、趙均の基づいた南宋の陳玉父本自体が悪名高い麻沙本であるとされ、すでに誤訛の多さ、体例の不備、詩の増入等の欠点を持つ」。文献批判が必要なわけである。
また、植木久行氏の「明末・清初の『玉臺新詠』研究の確立」(1981)は「明末から清初における『玉臺新詠』研究は、明代中期を風靡した古文辭派の文學主張に對する批判や是正の中から生まれてきたが、古書のテキストを比較對校して本來の姿に近づけようとする考證學的方法によって貫かれている」。
清代の孝証学は『玉臺新詠』にも及んだのである。
3.序文を読む
岩波文庫は3冊に分かれている。
(1)本書の編纂
(2)本書の性質・體裁
(3)餘説
(4)感想
4.本文を読む
本文は題解、義解、漢文、書下し及び脚注からなる。
巻1 古詩8首を読み、男女の関係を詩にしたのを読んだことがなかったことに気がつく。詩は自然か、交遊をテーマにしたものしか知らなかった。古来、詩は世情を知るためのものであった。それにしても、『唐詩選』とは違い、私の知らない作者索引が下巻にある。
注)
樋口泰裕「四書全書総目提要 玉台新詠 訳注」『文学部紀要Vol14』文教大学、2000年
植木久行 「明代通行『玉台新詠』本の解題」『小尾博士古希記念中國學論集』汲古書院、1983年
植木久行「明末・清初の『玉臺新詠』研究の確立」『中國文學研究 第7期」早稲田大学中國文學会、1981年
植木久行「幻の宋版『玉台新詠』陳玉父本を中心として」『中国古典研究 第26号』早稲田大学、1981年を読んでみたかったが、ネットでは見当たらなかった。
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