吉川忠夫『竹林の七賢』講談社学術文庫、2024年
「竹林の七賢」は3世紀中国の魏晋の時代の人であるという。山濤(さんとう)、阮籍(げんせき)、嵆康(けいこう)、向秀(しょうしゆう)、阮咸(げんかん)、劉怜(りゆうれい)、王戎(おうじゅう)。4世紀の東晋時代には「竹林の七賢」としてこれらの7人の人物が1つにまとめられたという。
絵画において「竹林の七賢」はテーマとなるので気にはなっていたが、何故なのかは考えてこなかった。「竹林の七賢」が誰なのかも気にしていなかった。本書を読んだ今なら7人の名前をあげることはできるが、書くまでは記憶できてない。
吉川忠夫氏は漢帝国の崩壊に価値観の喪失をみている。現代にも通じる価値の多様化の時代であったと言っている。
「7人の人物が「竹林の七賢」という1つのグループにまとめられはしたものの、そのなかにはさまざまのタイプの人間が含まれていて実に個性豊かである。それだけではなく、1人の人間についても、その性向と行動とが一見すると矛盾するかのように思われる場合すらないではない。その点においてもまた、儒教が唯一絶対の価値の源泉であった漢代とは異なって、価値が多様化した魏晋の時代の1つの指標をみとめることができるのだが、「竹林の七賢」の面々は、ある場合には文学作品や哲学論文によって、ある場合にはそのライフ・スタイルによって、それぞれに強烈でしたたかな自己主張を行ったのである」(p.4)
それぞれのエピソードを知って、絵画表現がどう結びついているか見ていきたいと思う。
本書では「竹林七賢・栄啓期図拓本(南京市西善橋出土)の磚(せん)画(pp.12-13)が参考にあげられていた。一眼で特徴的なのは阮咸(げんかん)が弾いているマンドリンなような楽器である。「阮咸琵琶」という。また、琴を爪弾くのは「琴の賦」がある嵆康(けいこう)である。後は皆さんお酒を飲んでいるので区別し難いのであるが、足を投げ出しているのは阮籍(げんせき)のようだ。今度「竹林の七賢」図に出会ったらじっくり見てみたい。
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