日本史史料研究会監修、白峰旬編著『関ヶ原大乱、本当の勝者』朝日新書、2020年
これはマニア向けの本であろう。東国の武将と西国の武将を見てみると、東国の武将では真田昌幸の戦いがないのは残念な気もする。桐野作人氏が西国の武将では島津義弘の戦いが欲しいとTwitterしていたのを思い出した。西国の武将の関ヶ原での配置が従来と異なるとしたら、関ヶ原の退き口の戦いも、違った観点が生まれるのではないか。この点は本書の編集者である白峰旬氏が終章で触れていた。
論点というものは、先行研究があるから出てくるものである。「石田三成に対する豊臣七将襲撃事件」、「小山評定の感動的な福島正則の逸話」、小早川秀秋に対する家康の「問鉄砲」などがフィクションだと言われると、今まで読んできた歴史の根拠がぐらついてくる。
「関ヶ原大乱」を慶長五年九月十五日の本戦だけをいうのではなく、広義に捉えて、「慶長五年の国内における政治的・軍事的な争乱状態」(P15)としてマクロな意味でみるのが本書の意義である。二次史料に拠るのではなく、一次史料を使った検証が必要だという指摘はもっともだと思う。
しかし、「関ヶ原の戦い(本戦)の状況について記された一次史料は数が少ない」(P301)。その中で、白峰旬氏が「(慶長五年)九月二十日時付近衛信尹宛近衛前久書状」の内容検討」したものに対し、藤井讓治氏が「前久が手にした関ヶ原情報」(田島公編『禁裏・公家文庫研究』第六輯、思文閣出版、2017年)で批判したことに、答えた終章は面白かった。
本当の勝者は誰なのかは、次回に続く。
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