『イギリス国制論(上)』(2023)

読書時間
バジョット、遠山隆淑訳『イギリス国制論(上)』岩波文庫、2023年
それにしても、この間、懐かしいペーパーバックが出てきたのであるが、今、見ようと思ったら、どこだかわからない。悲し過ぎる記憶力である。
Walter Bagehot,The ENGLISH CONSTITUTION ,1867,1872の全訳
三権分立とは何かが問われるのは、政治的な課題が民衆の前に上がる時である。イギリスの国制が三権分立であることついて、バジョットが否定しているのを読むと、最近も三権分立の議論の本があったことを思い出した。日本国も三権分立という言葉では説明できない統治構造を持っている。
バジョットは「イギリス国制のような巨大な存在は、外見は一貫して変化なく後世へ伝えられてきたが、内部では変化していることが隠されてきた」(p.16)という。
飯尾潤氏が『日本の統治構造ーー官僚内閣制から議員内閣制』(中公新書、2007年)で統治構造が1990年代から変わったと書いていたことを思い出した。そのうち本が見つかれば読み直したい。
下巻の解説がまだなのが残念だが、凡例にあった重要な原語については訳注を使って用語の一覧を作り始めた。governmentをどう訳すかを見て思い出したことがある(訳注(第1章(2))では「政府」「政権」「統治機構」と文脈によって訳し分けたことが書いてあった。)。
リンカーンの有名な演説の文句である「government of the people、by the people, for the people」が「人民の、人民による、人民のための政治」と伝統的に訳されてきたが、「人民による、人民のための、人民統治」(『リーダーズ英和辞典』(研究社)p.1628 people)が正確であることを薬袋善郎氏が指摘していたこともあってチェックしてみたのである。
要はこの本を楽しんでいるのである。
注)薬袋善郎『学校で教えてくれない英文法』研究社、2003年、p.109

コメント

タイトルとURLをコピーしました