文月最後の購入図書
(購入後記)
木田元の『哲学以外』(みすず書房、1997年)を読んでいたら、山田風太郎の本が文庫本ベスト5の最初に紹介されていた。岡本綺堂の『半七捕物帳』の時代を20年ばかり遡った明治の初めの設定で、警視庁の鼻を明かす元江戸南町奉行駒井相模守信興(のぶおき)や元同心の千羽兵四郎らの活躍を描く、混み入った小説である。山田風太郎の明治小説集の嚆矢である。岡本綺堂の『半七捕物帳』をラジオの朗読で聴いたときは、江戸の捕物の自慢話を後年の半七が新聞記者に語るものであった。これはこれで、江戸の風物が描かれていた。山田風太郎の『警視庁草子』の最初の「明治牡丹燈籠」では、西郷隆盛に向島を歩かせるところから始まる。源森堀から枕橋とは泣かせる。川路利良大警視、加治木警部、油戸巡査などの登場人物の紹介にしては上手い出だしであった。kindleで試し読みしていたが、思わず先を読みたくなってポチしてしまった。それにしても山田風太郎はシニカルである。
【文学】
山田風太郎『警視庁草子 上下合本版』角川文庫、2017年、kindle版
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