『パーミッション・マーケティング』(2011)

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セス・ゴーディン、谷川漣訳『パーミッション・マーケティング』海と月社、2011年
書誌情報
PERMISSION MARKETING by Seth Godin 1999を翻訳したのはブランディング・コンサルティングの阪本啓一氏だった。この『パーミッションマーケティング』(翔泳社、1999年)に対し新たに翻訳家の谷川漣(レン)氏が訳しているのが『パーミッション・マーケティング』だ。中黒の有無でタイトルが異なる。序文のドン・ペパーズを読めば誰が読者かはっきりする。
「私たちはみんな、一度きりの人生という限られた時間しかない。その時間をどのように賢く使うかは、生きているうえでとても大切なことだ。当然、何に「関心を向ける」かにも気をつかう。だから、未来の消費者に何かを買ってもらいたいマーケターは、こちらに関心を向けてもらうための最善策として、事前にパーミッション(同意)をとりつけておくべきだーーというのだ」(pp.4-5)。
このパーミッションはオプトアウトではない。オプトインである。だから、今のwebマーケティングのオプトアウト戦略は最善策ではないということが見通せる。
セス・ゴーディンの経歴そのものがマーケティング戦略を読むようで面白い。どうもハーバードの学者の本に飽きてきたのは、私には同じことの繰り返しに見えたからだった。
この本の何に共感したのか、彼の話のどこがささったのか。
「ところが10年ほど前から、大きな変化が起きはじめた。私はテレビの番組表を暗記するのも、読まなきゃと思っている雑誌をすべて追いかけるのも、とっくにやめていた。さらにオンライン情報サービスのプロディジーや、メガ書店が登場するにいたって、メディアにあふれる情報にはどうしたって追いつけないことを悟った。
そしていつのまにか、雑誌を開きもせずに捨てるようになった。テレマーケティングにも興味はわかず、さっさと電話を切るようになった。ボブ・ディランの新譜が出るたびに聴かなくても平気になり、ニューヨークにうまいレストランがたくさんあっても、自宅周辺の郊外店で満足していることに気がついた」(pp.23-24)。
いつからそうなったかわからないが、ボブ・ディランの新譜等を追わなくなっていたし、山岳雑誌も、『月刊京都』や『ならら』も買わなくなっていた。続いているのは『ひととき』くらいかも知れない。『京都手帖』も買っていないのだ。何かに熱中するのであるが飽きやすい性格で続かない。こうやってAttention が奪われるのであるが、長続きしないのは、私の性格のせいでもあるのだが、環境の問題もある。近くのレコード店はなくなったし、本屋もシャッターが閉まったままだ。マーケター側も私の顔が見えていないので、私に価値を与え続けられないのだ。この本に書いてあることが現実に起こっているので共感できたのである。
インターネットはインタラクティブなメディアがあるが、顧客とインタラクティブにつながっていない。ウェブサイトの在り方も既存顧客向けと新規顧客獲得向けは分けた方がいいという。関係を深めるためと関係を結ぶまでの違いはウェブサイトの設定思想に影響する。知りたい情報に辿り着けないウェブサイトはイライラするばかりで次には開かなくなる。このウェブサイトは特定の読者向けに作ったわけではない。自分と親しい人とのやりとりがもっと気軽にできるように変えたくなった。行動変容を起こさせればマーケターの目的は達成するのである。

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