中原淳『フィードバック入門』PHPビジネス新書、2017年
中原淳氏の本を読むのは企業内人材育成入門』(2006)以来です。
フィードバックとは「耳の痛いことを部下にしっかりと伝え、彼らの成長を立て直すこと」(P4)です。
フィードバックは「情報通知」と「立て直し」という働きかけをします。
情報通知は「たとえ耳の痛いことではあっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること(現状を把握し、向き合うことの支援)」です。
立て直しは「部下が自己のパフォーマンス等を認識し自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと(振り返りと、アクションプランづくりの支援)です。
部下の指導はティーチング(一方的な伝達)への反省からコーチング(相手本位の手法)を状況に応じて使い分けることが提唱されました。フィードバックはこれらよりも広い視座で考えます。
フィードバックは相対でされるため、プロセスはブラックボックスになっています。自分が上手くフィードバックできているかという不安がつきまといます。
中原淳氏は「部下育成の基礎理論から始まり、耳の痛いことをしっかり通知して立て直すためのフィードバックの具体例なテクニック、フィードバックのときに陥りやすい罠、また三人のマネージャーの方の事例について紹介」(P241)した後に、フィードバックをするためには組織がフィードバックコストを受け入れる必要があるといいます。
フィードバックは「個人の問題」であるけれども「組織の問題」でもあるといいます。フィードバックの有効性は個人レベルではなく組織レベルで強く規定されています。
「学術研究の知見によると、フィードバックをするためには、組織が受け入れなければいけない三つのコストがあると言われてい」(P242)ます。
・エフォートコスト(Effort cost):耳の痛いことでもしっかり言ってくれる人が、その組織にいるか。
・フェイスコスト(Face cost):他者と対面するにはコストがかかります。
・インファランスコスト(Inference cost):時間的・精神的余裕がかければ、フィードバックを正しく受け止め、実行することは困難なため、個人が余裕を持つために組織が払うコスト。
フィードバックが正しく行われる組織であることが問われています。
コメント