『論より証拠』(1985)その4

読書時間

谷沢永一『論より証拠』潮出版社、1985年第2刷

生涯読書計画を実践する五つの鍵

1.最初に無駄な設備投資をせよ
2.ひいきの著者を一人もて
3.読書は内容でなく味わい
4.解説書・入門書に気兼ねするな
5.できる限り嫉妬心を抑えよ

1.最初に無駄な設備投資をせよ
自分の肌合いに合わない本はあるし、一冊を選んで買って外れるとショックも大きい。だから、まとめ買をして比べてみる。全部読む必要はないのだ。
2.ひいきの著者を一人もて
これは他でも書いている。効用は計り知れない。
3.読書は内容でなく味わい
「読んだ本の内容をこと細かに記憶していることは、どだい、不可能だという点である」(p.34)。
「読書は、読んだ内容を全部覚えられるようなものではないのである」(p.35)。
「内容そのものより、内容を包み込んでいる著者の味わい、ニュアンス、雰囲気といったものによって、実際は読書しているのである。
たとえば、ケインズのひとことよりも、ケインズ流のあのテキパキとした、クールな論法を学ぶというか身につけることこそが、読書の実態だと考えていい。ケインズらしさ、誰それらしさを体で感じることが大事なのだ」(同上)。
ここに付箋が貼ってあった。谷沢永一の論法が好きなのであり、上田正昭の論の立て方が面白いので読むのだった。
4.解説書・入門書に気兼ねするな
「読書は味わいにあるといったが、それは本ものから、直接、学ぶべきであって、入門・解説書では、無理な話である」(p.37)。
「本もの主義を実践するには、自分なりのテーマ、分野をもつこと」(同上)。
普段着の読書でここでも、ある国の歴史を読むことが勧められていた。
「いってみれば、まったく無駄な不必要な趣味としての読書世界を自分なりに築くことである」(p.38)。
「趣味の読書からやや脱線するが、こらからは、他人と議論したり討論することが重要になってくる。命令の時代は去ってしまった。討論の時代の到来である。肩書き、役職は違っていても、円形のテーブルに同列にすわり議論し合うケースが増えてこよう。相手をどう説得し、気分を害さずに論点をひっくり返すかなどに知恵をしぼることになる」(p.38)。
これなどを読んでいると現役時代に読んでいたらよかった。そういうシーンがよくあった。
この点でE・S・ガードナーのペリー・メイスン・シリーズは論争術の模範であり、プラトン全集も議論を戦わすための本として世界最高であるという。
5.できる限り嫉妬心を抑えよ
「若い著者、ライターに対して、軽蔑感、嫉妬心をもたないように努力し、彼らから、いかに実のある内容を吸収するかに心を傾けたいものである」(p.40)。
「いまや、書物ばかりではなく若者たちから直接、彼らのアイデアやセンスを学びとり、自分のものとしなければならない時代になっているのだ」(同上)。
「欠点だらけの中にひそむ若い世代のセンスをいかに盗むか。虎視眈々と鋭い戦略戦術眼をもって、読書もしたいし、対人関係にも気を配っていきたい」(pp.40-41)。
そして、寸暇を惜しむことが言われた。
それが歳時記だった。ようやく自分の行動の意味がわかった。『歳時記』は持ち歩かなければいけないのだ。そう、今ならば文庫版でなくkindle版にする。

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