『アリストテレス『ニコマコス倫理学』』(2022)

読書時間
山本芳久『アリストテレス『ニコマコス倫理学』』NHK出版、2022年、kindle版
100分de名著の2022年5月放送のテキストをkindle版で読む。図版など電子版は著作権の関係でないものもあるという。しかし、大勢に影響はない。必要なのはアリストテレスの『ニコマコス倫理学』の本体の方なのである。ただ、いきなり本体を読んでも挫折するだけなので、挫折しないための、ないしは、諦めるためのテキストを読むのである。
ピエール・アドの「生き方としての哲学」( La philosophie comme manière de vivre)という論文の引用から始まる。manière de vivreを「生の技法」と直訳すると、古代の哲学が専門家のためのものではなく、多くの人々のために開かれていたことに納得する。本は題名からでは何が書かれているか必ずしもかわからない。倫理学が生き方を問うのであれば万人に必要なことだと思う。
山本芳久氏はトマス・アクィナスの研究者である。山本芳久氏の本を何冊か読んできたので、アリストテレスがトマス・アクィナスの理解のために必須であることはわかっていた。人生の早いうちにならともかく、終わりになって、幸福とは何かを考えるようになったのは、病気をして自分に向き合うようになったからだろう。あと何を読んだらモヤモヤを少しでも解消できるかを考えている。若かった頃に岩波文庫でカエサルの『ガリア戦記』を読んだ時、こういう古典を読む人は周りにはいなかった。気晴らしのアクションものか、ミステリーを読むのがサラリーマンの日常に僅かな刺激を与えるために必要だったのだろう。山の本で私はスリルを味わっていたことになる。

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