「初期歌合における文字遊び」を読む

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奥野陽子「初期歌合における文字遊び ー「をみなてし」を中心にー 『國語國文』第90巻第7号41-63

目的の論考を読めば他は読むことがないのが、雑誌を扱い方である。目的を持たない読書もたまにはしないと視野が広がらない。『國語國文』に載っていた他の論考に目を通すことにした。

古今和歌集成立前に仮名により和歌は書かれていた。『古今和歌集』が仮名の勅撰和歌集の初めであるが、和歌はその前に仮名で書かれていた。奥野陽子氏は『宇多院の歌合新注』(注1)で古今和歌集成立前の文字遊びの和歌の技法に注目したという。『万葉集』でも物名など文字遊びはあった。『古今和歌集』の物名歌は「意味と音を分離し音の方を仮名として詠むので、歌の意味の上に物の名は顕れず隠されている」(42頁)。意味の中にそのまま物として詠み込む『万葉集』との技法の違いを明らかにしている。

そこに日本語史研究者の小松英雄氏(注2)を引用して仮名の特性(清濁を書き分けない音節文字)の上に文字遊びが盛んになったという。久しぶりに小松英雄氏の名前が出てきた。そして自分が和歌から遠ざかっていたことに気がついた。

(注1)三木麻子・奥野陽子・岸本理恵・惠阪友紀子『宇多院の歌合新注』新注和歌文学叢書27、青簡舎、2019年

(注2)小松英雄『やまとうたーー古今集の言語ゲームーー』講談社、1994年
小松英雄自著解説(第4版笠松書院)によれば、「『やまとうた』(講談社・1994)を隅々まで書き改め、さらに新たな1章を加えた」のが『みそひと文字の抒情詩 古今和歌集の和歌表現を解きほぐす』(笠間書院、2004年、新装版2012年)である。

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