藤木久志『天下統一と朝鮮侵略 織田・豊臣政権の実像』講談社学術文庫、2005年、2006年第2刷
本書は一般書ということで参考文献を載せていない点が不満であるが、論者の名前は出てくる。今まで読んだ本の中で目にする名前が出てきて、論者がどのような貢献をしたのかの大所を教えてくれる。
織田権力と一向宗との対立を説明する第一章 石山戦争への道を読むと、名主(みょうしゆ)、領主、国衆(くにしゅう)が戦国大名である織田権力にどのように取り込まれていったのかを史料に基づき説明しているので、織田権力と一向宗が何故に対立するかもよく分かった。
これまで読んできた本は、本書のような知見を前提に論が始まっていたようなので、瑣末なところが論点になり全体観が見えなかった。論者は精緻な論理構成を目指すから、論点が細かくなるのは仕方がないが、一般書の読者人には無理があった。その点、本書は織田軍団を構成する美濃三人衆と呼ばれた稲葉一徹などの国衆(在地領主)、尾張出身で信長の直属の家臣に取り立てられた前田利家などの中世名主層が信長に何を保障されたのかを史料であきらかにしていた。中世の支配・非支配の複雑な関係を大局から見通す感じがした。荘園についての基本的な知識を再確認しながら、読み進めているので、なかなか進まない。それをゆるがせにしては本書は分からないだろうと思っている。荘園制の解体過程を織田権力と一向衆の対立の中で見ていくのであるから。
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