『戦国北条家の判子行政』(2020)

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黒田基樹『戦国北条家の判子行政 現代につながる統治システム』平凡社新書、2020年

黒田基樹氏の戦国北条家関係の15冊目の一般書である。戦国北条家の虎朱印「禄壽應穏」が帯にあったので、買ってしまった。私にとって3冊目の一般書になった。

虎朱印の「印文は「禄と寿、まさに穏やかなるべし」と訓み、領民の禄(財産)と寿(生命)を保証して、平穏無事の社会にする、という意味であった」(P15)。

統治におけるスローガンでは、織田信長の「天下布武」の印判も有名である。

昨今、判子の廃止の議論がでてきた。本書によると、「日本社会での印判使用は、古くは古代の律令国家にさかのぼり、天皇の御璽、中央官司の太政官印や地方官司の国衙印・郡衙印、あるいは寺社の印などが、公文書に押捺され、発行された」(P28)とある。

その後は、花押(かおう)というサインが平安時代後期から江戸時代まで用いられた。

判子の使用をもって判子文化とは言わないらしい。

「ただし、判子文化という場合には、統治機関の使用のみならず、民間の会社や庶民も一様にする状況を指」(P28)すため、百姓が印判を使用した江戸時代が起源だとしている(P29)。

その意味で、戦国北条家が現代の「納税通知書」に当たる文書に印判を使用したのは画期的だった。当時は村が納税主体であったから、後北条氏の祖にあたる伊勢宗瑞が永正十五年(1518)に出した書類の宛先は伊豆長浜村・木負(きしよう)村だった(戦北三五)。

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