『月の桂離宮』(2009)

視聴時間

三浦和義『月の桂離宮』小学館、2009年

こういう本とDVDのセットものはカテゴリが難しい。ココログは複数のカテゴリが選択できたが、Abemaはひとつのテーマしか選べないので「視聴時間」にしておく。

NHKハイビジョン特集「桂離宮 知られざる王朝の美」を見たとき、夜の桂離宮という非日常空間はどんなに良いものかと思った。それをDVDにしたものと三浦和義氏の撮り下ろしの写真集を合体したのが本書である。

千住博氏が「月を見る装置」というエッセイを載せている。東京から新幹線に飛び乗って京都に着き、日没に急ぎ足で訪れた千住博氏が、桂離宮という装置によって庭園のペースで歩かされる。そして月の光の美しさを再発見する話だ。

非日常の世界への入り方で次第で、井上章一氏の『つくられた桂離宮神話』(講談社学術文庫、1997年)も違ったものになっていただろう。昼の光線で見る白い障子の建物は、私にとっても何か異質なものを感じてしまうのだ。

桂宮智仁親王と智忠親王の親子二代に亘り築かれた桂離宮。その最後の新御殿は襖の引手が月の字を象ったものだし、欄間も月字を崩した意匠だ。障子に明かりが映る夜の桂離宮はDVDでしかみることはできないが、御殿の東の月波楼から見る10月の満月はよい。しかし、古書院の月見台からの眺めをコンピュータグラフックで再現したはやはり艶消しだった。解説は要らない。ずっと月を眺めさせてくれ。月見は三浦和義氏の写真で味わうしかない。千住博氏のエッセイにあるようにこの撮影チームはせわしない。不満を覚える理由である。

桂離宮のDVDには他に『NHKスペシャル 桂離宮 知られざる月の館』(NHKエンタープライズ、2010年)の本編49分+特典18分の67分版がある。これは松平定知氏が語りをしている。2009年の放送である。こっちも見たくなったぞ。

それに対して本DVDは、2008年11月25日の番組を元に再構成した87分のビデオである。ナレーターは柴田祐規子氏である。この再構成が曲者である。

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