中野三敏『古文書入門 くずし字で「百人一首」を楽しむ』角川学芸出版、2010年、2011年第5刷
古文書への入門は先達につくのが一番であるが、機会がないままに歳を重ねるのも残念なので、活字本を戦前から明治に遡る本を読むことで旧仮名遣いに少しなれた。いよいよくずし字である。まず入門書をどうするか悩む。本が多いがそれだけ挫折している人も多いはずである。英語の参考書が多いのも学習の進め方が能力に合わせてレベルを選べるように様々になっているからである。だから、どんなに評判の良い学習参考書を選んでも、学習段階が合わなければ力にならない。
中野三敏氏は昨年(2019年)亡くなられた。『和本のすすめ』(岩波新書、2011年)を読んでいたので、この人の本を使うことにしたが、中身を見ると弟子が書いている。本を選ぶのは難しい。帯などで騙される人は多いはずだ。
中野三敏の古文書入門シリーズ3冊
『くずし字で「百人一首」を楽しむ』初級編
『くずし字で「東海道中膝栗毛」を楽しむ』中級編
『くずし字で「おくのほそ道」を楽しむ』上級編
中野三敏は板本(はんぽん)から始めるのが良いという。写本はくずし字の判読が難しい。そこで初級編として板本に拠る本を選択した。ただし、仮名はくずし字のため、先に活字本で旧仮名遣いに慣れておく必要があると思う。仮名遣いが分からないと母字が思い浮かばない。
書誌情報
長野美波留の「百人一首抄」(文政二年序刊)の本文のみを影印し、現代語訳と語註は島崎忠夫訳註『新版百人一首』(角川ソフィア文庫、1999年)に拠り、若干手直しをしたとある。全体の原稿は亀井森鹿児島大学准教授の全面的協力をあおぎ、成稿したとあるので、中野三敏監修が実態であろう。くずし字の読み方に特化したので、訳註は他の著書に依存するという作り方である。
しかし、変体仮名は一部を取り上げただけで、全部の母字を書いていない点、初級レベルとしては残念な気がする。中途半端と言わざるを得ない。
『古今和歌集』は以前、仮名の読みを高野切れで朧谷寿先生に習ったが、だいぶ怪しくなっており、変体仮名に慣れることにした。くずし字の違いが分かる男になりたいものだ。この点も自分の語学の能力と知識とのアンバランスを感じていることである。
百人一首などほぼ覚えているので、母字が分からなくてもくずし字の読み方の想像がつくので読めてしまう。
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