『術語集』(1984)

読書時間

中村雄二郎『術語集 ーー気になることばーー』岩波新書、1984年第3刷

旧公認会計士第二次試験に受かり、就職して1年が経った時に、この本を購入している。1979年に大学を出てから、本を買わなくなったが、また買うようになったのだろうか。帯の「現代思想のすべてがこの一冊に」と宣伝文句に惹かれたのだろうか。

中村雄二郎は森有正が死去したあと、私が本を読む対象にした人だ。だから、この宣伝文句で買ったわけではないだろうが、この宣伝文句で本屋に平積にでもされてなければ、気がつかなかったのかもしれない。初版第1刷でなく、第3刷を手にしているのだから。

当時も現在もことばの定義が難しい状況は変わらない。そうした中で、中村雄二郎は私家版辞書とも言うべきキーワードを40あげている。当時はわからなかったが、今は少し読む気になる。あれから、35年以上の時が経ち、回り道した私がここに戻ってきている。

「エロス」で扱っているジェンダーの問題も、いまならLGBTに触れることになるだろうし、「暗黙知」に関するパターン認識論も、今なら機械学習による人口知能との関係で述べる必要があるだろう。それぞれの分野で議論は進んでいるだろうが、知の地平線を示すのは困難極まることだ。

私は本書を読みながら、あらぬ夢想をしている。書くことは正しいが、書いた内容は必ずしも正しいといえない。だが、書くことでしか思想は引き出せない。読むことは疑うことでもあるが、信じることでもある。

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