『見仏記』(1993)

読書時間

いとうせいこう、みうらじゅん『見仏記』中央公論社、1993年、1994年第5刷

私は勘違いしていた。二人の名前があるのでテッキリ二人で分担して書いているものだと思っていた。確かに分担していたけれど、文章はいとうせいこう氏が、絵はみうらじゅん氏だった。

二人の見仏の記録の最初の本だ。奈良、京都、東北、九州と15回分ある。この本はシリーズになって刊行され、途中から角川書店になり、文庫化もされて、角川文庫で6巻、TV見仏記、新TV見仏記はDVDからBlu-rayになって都合25巻も出ている。

博物館のイヤホンガイドでも何度か二人が登場したのを聴いている。ヒットしたおかげだ。専門家でもなく、マニアの仏像を見る旅の記録が今時の「古寺巡礼」なのだろうか。

私はやりっぱなしの人なのでみうらじゅん氏のように「仏像スクラップブック」を作ったことはないけど、口絵の写真を見て衝撃を受けた。小学生時代のことだという。「細かい描写と熱気。『見仏記』はこの文章を超えられるのか」というコピーを見て買ってしまった。文庫本だったら小さすぎて老眼の私は感動しなかったかもしれない。

仏像の見方を変えられたのは土門拳の写真だったけど、私はそれらを近くに置いて見るという訓練をしてこなかった。見たことに満足していた。印象はおおらかとか、硬いとか、悲しげであるくらいのものしか残っていない。写真を三択で示されても選べない自信がある(笑)。幸いブロマイドを集めるようにお寺へ行くたびに記念の絵葉書を買っていたので、私もスクラップできるではないか。私の感想も書くけど空白が埋まらないので有名人の感想を寄せ書きしたりして楽しむことにしよう。そのヒントをこの本から得たのだった。当然、いとうせいこう氏やみうらじゅん氏の感想もいただくことにして、和辻哲郎や堀辰雄など、四都手帖私家版見仏記の妄想がどんどん広がっていくのであった。

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