金沢散歩(その3 あうん堂本舗)

旅の時間

ひがし茶屋街で食事をして浅野川大橋まで戻ったところで、ふと古本屋のことを思い出した。橋を渡って主計町へは行かずに、浅野川沿いに西へ向かうことにした。しかし、そろそろあるはずのところに古本屋が見当たらない。男の人が歩いてきて北側へ消えたので、そこが古本屋の入口だと分かる。電柱に案内があり、店側には看板が出ていなかった。Books & Cafeと小さな字が建物の入口に書いてある。

ガラスのドアを開けて中に入ると細長い部屋のつくりになっていた。靴を脱いで上がる。一階が本と喫茶スペースで二階への階段は上がれないようになっていた。奥様に中川ワニ珈琲を淹れてもらう。器も中川ワニのデザインで、いつか丹波の立杭で買ったカップの様な持ち手で、片方しかカップに接していないやつだった(酒を燗するちろりにありがちな持ち手のようなデザイン)。取扱いには慎重を要する。私のは3.11で欠けてしまった。クッキーが付いてきた。喫茶コーナーの椅子に座って壁に飾ってある本を手にとってみる。どうも売り物ではないらしい。天窓からの光が明るいことや、中庭の眺めを奥様と話しているうちに時間も経った。

文楽が始まる時間も近づいてきたので、右手の書庫の中から、樋田直人『蔵書票の美』(小学館、1986年)を選びカウンターへ向かうと、ご主人が蔵書票の沼の話をしてくれた。蔵書票も所詮消耗品なので、蔵書に貼ることになると思うが、それなりの本がなければならない。いずれ処分するものには蔵書票は貼らないし、サイン本など処分できない本に貼るだけの蔵書票を持っていない。蔵書票そのものをコレクションにすれば話は別になる。手頃なアートとしてのコレクションが蔵書票の魅力の一つでもある。私も額装した蔵書票があり、たまに出しては部屋の気分を変えている。自分でも蔵書票を作ろうと考えていることに気がつき、沼に嵌らないように注意することにした。

コメント

タイトルとURLをコピーしました