『企業内人材育成入門』(その3)

読書時間

中原淳編著、荒木淳子、北村士朗、長岡健、橋本諭『企業内人材育成入門』ダイヤモンド社、2006年、2014年第15刷

序章

人材育成とは「組織的かつ戦略的に取り組むべき企業活動の一環」という認識の背景に、人材マネジメントの変化をあげている。かつて人材育成が人事労務管理の一部として経営戦略と独立していた。人材は管理の対象であり、どこも似たり寄ったりの人事政策であった。

現在の人材育成のキーワードを2つあげる。「戦略的HRM」と「コンピテンシー」だ。

戦略的HRM(Strategic Human Resource Management)は「競争力の向上」という明確な目標がある。

コンピテンシーはすでに経営用語として一般化したが、ここでは、「特定の業務を遂行し、高い水準の業績を上げることができる個人の行動特性」と定義している。「高い能力をもつ者は高度な仕事を担当し、その結果大きな貢献を会社にもたらす」という仮説の虚構性、「能力が高いからといって、高業績とは限らない」という事実に対し、「高業績者に共通する行動特性(コンピテンシー)を発揮しているものは、会社の経営戦略遂行に貢献できる」という仮説をもとにリストアップされたコンピテンシーを充足・強化させようとする。

そして、ワークプレイスラーニングとしう視点を出してくる。ワークプレイスラーニングとは「個人や組織のパフォーマンスを改善する目的で実施される学習その他の介入の統合的な方法」である。人格スキルの向上ではなく、業績に結びつく知的生産性向上を実現することを目指す。研修やセミナーといったフォーマルな教育プログラムだけでなく、現場におけるインフォーマルな学習を念頭に置いている。

知的生産性はこの回の「人材育成をめぐる読書の旅」のテーマである。

本書はワークプレイスラーニングという視点から、HRMといったマクロレベルでなく、「人はどのように学習していくのか」「学習を促進・支援するにはどうしたらよいのか」「効果的なアドバイスの方法な何か」といったミクロなレベルでの方法論のベースとなっている、心理学・認知科学・学習科学・教育学・教育工学の諸理論を扱う。

序章だけで全体観が見えたので、あとは、8つのテーマを淡々と読んでいくことになる。

『企業内人材育成入門』(その4)

コメント

タイトルとURLをコピーしました