山内晋次氏の論文「九世紀東部ユーラシア世界の変貌ー日本遣唐使関連史料を中心に」(『仁明朝史の研究』角田文衛監修、古代學協会編、思文閣出版、2011)を読んでいたら、遣唐大使藤原葛野麻呂が帰国報告する話が出てきて、『日本後紀(上)』(森田悌、講談社学術文庫)を引っ張りだす。
巻十二 延暦二四年(805)六月乙巳の条は逸文ではない。
上奏文は出発から、帰国までの話と唐の情勢に分かれている。「空海」を扱った本を読むと前半は利用されているが、後半はほとんど利用されていない。論文では後半の東部ユーラシア世界の国際情勢が述べられているのが新鮮だった。唐帝室の状況を除いた2点が検討されている。
(1)反唐朝的節度使の動向
(2)唐・吐蕃関係の状況
次に最後の遣唐使となった承和の遣唐使の話になるが、正史では報告がないので、円仁の『入唐求法巡礼行記』より東部ユーラシア世界の状況の分析をしている。論文は延暦と承和の遣唐使の間である仁明期に画期をみる。
論文はここがメインだが、『入唐求法巡礼行記』は気になっていたので読んでみたくなった。
Webで本を調べてみた。
現代語訳は
圓仁、深谷憲一訳『入唐求法巡礼行記』(中公文庫、1990)があるが品切のため中古になる(2014/08/23 Amazon)。
書き下し文は
円仁、足立喜六訳注、塩入良道補注『入唐求法巡礼行記1』(東洋文庫、1970)
円仁、足立喜六訳注、塩入良道補注『入唐求法巡礼行記2』(東洋文庫、1985)
参考リンク
近代デジタルライブラリー
入唐求法巡礼行記研究会
読んで面白かったDon Panchoのホームページ
円仁の入唐求法の旅と彼を支えた新羅人・張保皐
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