版の違いということ

断片記憶

森浩一著『僕は考古学に鍛えられた』 (ちくま文庫、2012)を読む。

「この作品は平成十年十二月筑摩書房より刊行され、平成十四年、加筆、改訂、再編集し、『わが青春の考古学』と改題して新潮文庫に収録された。」

それを今回どうしたかをハッキリ書いて欲しかった。

文庫版のあとがきを見ると2011年なので「新潮文庫版」の後になったものだが、違いがあるのかないのかはっきりしない。元の筑摩書房版に文庫版のあとがきをつけたものなのか、新潮文庫版をつくる際の加筆、改訂、再編集はどこにいったのか。この文章では分からない。あとがきは出版社の宣伝に過ぎないとは谷沢永一氏の見立てである。

改題された『わが青春の考古学』(新潮文庫)の方を「保立道久の研究雑記」では日本史の名著30冊に入れている。まあ、改題されたタイトルの良し悪しは別にして、元のタイトルで筑摩書房が文庫化したのを知らなかったので、ネットストアで出回っている古本を注文するところだった。いや、まて、もしかしたら、新潮文庫版の方がすぐれているのかもしれないのではないか。

森浩一氏はその後の人生について何も言わずに亡くなってしまった。輝ける青春ものはそういう意味では三浦雄一郎や小沢征爾の若き日の話が面白かったのと似ている。時分の花である。

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