尸位素餐(しいそさん)は通ぜず

断片記憶

辻井重男氏のMELTupの講演会の前振りのお話の中で、小松啓一郎著『暗号名はマジックー太平洋戦争が起こった本当の理由』(KKベストセラーズ、2003年)に載っていた言葉が以下の熟語だった。

尸位素餐(しいそさん)

「高い官位にありながら、満足に職責を果たさず、給料だけをもらっていること」という謙遜の意味の熟語である。

日米交渉が遅々として進まないことから、辞意の意思の暗号電文を日本へ送った野村吉三郎駐米大使の意図とは別に、傍受した米国暗号解読者は分かろうはずもなく意味をすり替えて報告したという。

翻訳とは難しいものだと思う。誤解の積み重ねが相互不信を深めて行ったとしたら残念なことだ。

本の帯の裏側に

「日本の外交暗号「マジック」は、

ここまで歪めて訳されていた!

日米開戦の決定打“たかが誤訳”を

生んだパーセプション・ギャップ(認識の差)

の正体とは?」

とそそられる文句があるのだが、手にとって見なけれは分からない。辻井氏はタイトルの「暗号」でひっかかったんだろうなあ。

この本はパーセプション・ギャップを扱った国際関係論の本で暗号の誤訳がなぜ生じたかに焦点が絞られている。暗号学の先生にとっては話の前振りで終わってちょうど良い。

注)

私の本棚の分類では、「セキュリティ」ではなく、誤訳の問題なので「言語」にしている。「国際関係論」の分類があればよいのだが、このての本は買わないので本の分類が立っていない。

この文書のカテゴリーは古書の話ではなく、辻井先生のお話のネタなので「断片記憶」としている。

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