皐月は本の片付け作業で出て行った本を見送った。その中で、拾い出した本を書いておく。記録しておかないと思い出すことすらできないのだから。
【思想】
伊藤勝彦『天地有情の哲学 大森荘蔵と森有正』ちくま学芸文庫、2000年
伊藤勝彦(1929-2015)が大森荘蔵(1921-1977)や森有正(1911-1976)を論じる違いは年齢差もあるであろう。大森荘蔵に対しては東大の先輩なのでさん付けで、森有正に対しては先生という関係性にある。
森有正の本を読んでいても、森有正の人生はよくわからなかったが、伊藤勝彦の本で家族のことが書いてあり、森有正の人としての輪郭が少し見えてくる。辻邦生(1925-1999)もパリでの森有正との交友しか見せてくれなかったので、考えてみれば、小説家としてもっと扱い方はあったと思うのであるが、書けない空気があったのかもしれない。森有正が留学先から帰らなかったという話は知っているが、離婚した話や家族との関係性などを辻邦生は書かず、思想について1冊、『森有正 感覚のめざすもの』(筑摩書房、1980年)を書いただけで、あとはエピソードをセッセイにしたためただけだった。
伊藤勝彦が森有正の講義を聴くところを読むと、この本を買った当時は分からなかったことが少し見えてくる。哲学のテキストを辞書を引きながら読む経験を今さらしている。取り上げられた本を全く知らない状態から、名前に馴染みができた段階の違いがある。哲学史というか研究史がわかっていないと何を論じているか分からない。
バートランド・ラッセル、髙村夏輝訳『哲学入門』ちくま学芸文庫、2005年
どういう文脈で買ったのかは忘れてしまった。解説にペタペタ付箋を貼り付けてある。カントを読んでから読むと書いてあることが頭に入ってくる感じがする。やはり前提となる知識がある程度にならないと理解そのものが進まないのだろう。
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