船山徹『仏典はどう漢訳されたのか スートラが経典になるとき』岩波書店、2013年
書誌情報
「本書は、筆者がこれまでに発表してきた論文や概説を基に、漢訳仏典の特徴をさまざまな視点から整理した概説である。漢訳の特徴に興味を抱く一般読者、学生、その他多くの方々に通読していただけるよう、既発表の論文や概説の体裁を全面的に改め、入門的な解説と序論、結論部分を新たに補い、読みやすくなるよう配慮したつもりである」(p.281)。
要するに概説本である。参考文献、仏典漢訳史略年表(後漢から北宋まで)、索引はあるが、注は割愛している。
二つの視点から書かれた。
一つは「東アジアの歴史・思想史・文化史研究における仏教の、そしてその仏教における漢訳の位置付けという視点」→「歴史研究、思想史研究における仏教および仏教翻訳史からみた漢訳の意義」(vi)。
もう一つは「人類の知的営みとしての翻訳史において仏典の古典中国語訳がもつ特徴」→「戦後の実践的な通訳のあり方とも深く結びつく、いわゆるトランスレーション・スタディーズ(翻訳学)からみた漢訳仏典の意義」(同上)。
全9章からなる。目次は簡略である。第1章に付箋が貼ってあるので、前回はそこまで読んだことがわかる。第1章は序論として仏典の意義と翻訳対照となる原語(サンスクリット語(梵語)、パーリ語、ガンダーラ語、仏教混淆梵語)が概説され、各章のテーマと構成を明らかにして、第9章は各章の要約と結論を述べている。
第1章では、基本用語が三つ説明される。
「すなわち仏典の総体をあらわす大蔵経(だいぞうきょう)、翻訳者たちの伝記を含む僧伝(そうでん)、翻訳された文献の目録である経録(きょうろく)である」(pp.10-11)。
こうやってメモをとりながら読むと時間はかかる。しかし、何もしなければ、読んで忘れるだけである。本をどう処置したらよいかの情報すら得られない。この本は概説書として、手元に置いておくという判断になった。
というのも、吉川忠夫・船山徹訳注『高僧伝』(四分冊、岩波文庫)の第一分冊の「訳者解説」を読むことになったのは本書で紹介していたおかげなのである(p.13)。
(参考)
2014/11/13 『高僧伝(1)』(2009)
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