伊藤之雄『真実の原敬 維新を超えた宰相』講談社現代新書、2020年
「あとがき」で、伊藤之雄氏が先輩方の仕事に違和感を感じていたという話が書いてあった。ああ、伊藤之雄氏らしいなと感じた。違和感を解き明かすのが伊藤之雄氏の仕事だ。人物の評価は難しい。史料をどう読むか、人間をどう捉えるかに関して対立が生ずるのは避けられない。同じ史料を読んでも読むコンテクストが違えば正反対にもなりうる。原敬の評価について、伊藤之雄は「近代日本の最高のリーダーの一人」(P258)とする。伊藤之雄氏の仕事を見れば、伊藤博文も挙げてよいだろう。
コロナリクスの日本の中でリーダー不在は哀しい現実である。戦前の政治の劣化と平成後半から令和にかけての政治の劣化は生きづらい社会を日本にもたらした。政党政治はベストではないがワーストでもないと信じたい。政治はビジョンに共鳴するものがなければ支持されず、政治への無関心は政治の劣化を助長する。
伊藤之雄氏が「生後七子ヶ月の芝犬健太郎と高野川・賀茂川べりを散歩しながら」(P261)と書いていた。下鴨神社の近くに住んでいることは以前に読んだ本に書いてあった。しばらく伊藤之雄氏の主張に耳を傾けてみよう。
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