上横手雅敬『源義経』平凡社ライブラリー、2004年
上横手雅敬(うわよこて まさたか)氏の文章は分かりやすかった。初めて読んでスッキリ頭に入るのは、余計なことを言わないことによるのだろう。
源義経の話はどちらかというと伝説ばかり聞かされてきたので、伝説を取り払って見ると、まずは厄介ものであるに違いない。消息の間が開くと、その間に源義経が何をしていたのか気になる。この時代は兵糧米に戦が左右されていた。鴨長明の『方丈記』が伝えるように飢饉の時代である。
上横手氏は源義経を「自専の人」と評した。無断任官も「自専」であり、没落する原因である。御家人との対立も自らの驕りのためであり源頼朝に疎まれる原因となった。源頼朝の狭量・狷介だけが原因ではないと上横手氏は書いている。
腰越状については、様式・文言からみて当時のものではないとされているとしたうえで、「若干の難点はあるとしても、概して義経の側近あたりがつくったものとみてよいのではなかろうか」としている。上横手氏が注目するのは義経の生い立ちを語る中で「被伏(服)仕土民百姓」の句である。文字通り読めば、「土民百姓に服仕され」たわけで、義経の凄まじい生き様が見えてくる。とても御曹司と言えたものではあるまい。
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