養老孟司『考えるヒト』ちくま文庫、2015年、2021年第2刷
通勤時間に読んできたが、本書は、『唯脳論』(1989年)の解説に近いものであるという(p.211)。脳と意識がテーマとなっていた。
第1章 脳は何をしているのか
第2章 脳と心の関係
第3章 脳と遺伝子
第4章 知覚と運動
第5章 脳の中の現実
第6章 意識と行動
第7章 意識とことば
第8章 意識の見方
終章 意識と無意識
第8章ではアメリカの意識学会が扱われていた。例によって養老孟司氏の学会に対する見方が披露され、日本人の在り方が浮き彫りにされる。
日本の学会について、アメリカと比較した話だ。「日本人には、こういう会議はなかなかない、なぜなら一つは、偉い人の正しい意見を聞こうという人ばかりなので、「正しい」意見がはっきりしないうちは、その偉い人も実質的なことはなにもいわない。だから結局、議論にならなくなってしまう」(p.178)。
「偉い人がひたすら悪いというわけでもない。一般の人にもそういう傾向が強い。それは、新しい説が出ると、それが「正しい」かどうか、それだけを聞きたがる人が多いからわかる」(pp.178-179)。
こうした皮肉にもかかわらず、意識学会の開催者が参加者の主張を分類のしたものをあげていた。(1)白衣の軍団からはじまり、(12)超能力派まであり、多様性があるという。
あとがきで「意識と表現、さらに身体と表現の問題が、私の次の問題なのである」(p.211)と書いてあり、後半の急ぎ足に対して補足があった。しかし、どの本がそれに当たるのか、多作なのでわかりにくい。
コメント