谷川健一『白鳥伝説』(1985)

読書時間

谷川健一『白鳥伝説』集英社、1985年

谷川健一の4部作といわれる本の1つ。どの順に読むのがいいかは普通は発行順だと思う。しかし、読み手の事情もある。『青銅の神の足跡』はすでに読んでいる。内容の細部は忘れたが、西日本の話だった思う。

4部作の内訳1,416P

『青銅の神の足跡』集英社、1979年、あとがきまで333P

『鍛冶屋の母』(思索社、1979年)、河出書房新社2005年、解説まで232P

『白鳥伝説』集英社、1985年、あとがきまで535P

『四天王寺の鷹』河出書房新社、2006年、あとがきまで316P

最近、2冊ある『青銅の神の足跡』の1冊を枕元に置いてナイトキャップにしている。数頁も行かないうちに、眠くなる。だから、姉妹編の『鍛冶屋の母』を飛ばして、『白鳥伝説』という分厚い本から先に読もうと思う。どうせ最後まで読まないから、好きな東北へ向かうのだ。

序章

谷川健一は『遠野物語』に柳田国男の雄叫びを聴く。

何度も引用された言葉だ。

「国内の山村にして遠野より更に物深き所には無数の山神山人の伝説あるべし。願わくは之を語りて平地人を戦慄せしめよ」。

柳田国男は詩人の魂があるのだろう。

「あたかも金石に彫りつけた文章のように、するどく硬く、烈しいこの一句は、七十年を経た今なお、冷厳な森の思想を象徴するかのように屹立している。そして柳田の雄叫びが私たちの胸中に谺するとき、東北の山野の木の葉はいっせいにざわめき立ち、森の木の葉の一枚一枚が言問う世界へと、私たちは誘われる思いがする。幾千年もの間私たちの意識の底に眠りつづけていた狩猟民の感覚や奇怪な異神への信仰が眼をさまし、躍動するのをおぼえて「戦慄」するのだ」(P11)。

谷川健一が戦慄したのは「蝦夷の歴史の世界の奥深さ」(P543)に対してであり、それを詩人の魂で書いていく。

電車の中で読むには重過ぎるので、夏休みの読書に相応しい。

#谷川健一

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