『お聖どん・アドベンチャー』(1977)は当時を知ってるとすごく楽しい。

読書時間

田辺聖子『お聖どん・アドベンチャー』徳間書店、1977年第3刷

田辺聖子さんが2019年6月6日に亡くなられた。

思い出したように、『お聖どん・アドベンチャー』が読みたくなった。これは、実名SF小説で、田辺聖子さんの仲よしの方が出てくる。だいぶ故人となられた。

「デブデブ牧場」

筒井康隆氏や小松左京(故人)が言論、出版、集会、結社の自由が失われた世界で、小説が書けなくなり、食えなくなって、養鯨牧場を始めた話だった。私(お聖どん)もそこで雇われているが、西部と違って、北氷洋では女は半人前に扱われるという。パロディ小説はSFの一つの分野であると書いてある。

こんな調子で、小説家の名前が勝手に使われる。やはり、小松サンや筒井サンがこの8本の短編のスターである。何より関西弁による会話が楽しい。筒井サンの『農協月へ行く』のパロディ読んで「後ろ指」を書いているのだからたまらない。養鯨牧場が国に接収されてしまい、あちこち放浪したあげく、浪速町商店街・観光宇宙船従業員募集に三人応募したのであった。ここでは佐藤愛子氏が親分で登場する。

観光宇宙船事業も乱立から潰れ、三人はまた投げ出される。今度は、藤本義一(故人)が大人のオモチャ屋を細々と営んでいる瀬戸内海へやって来る。これが「あひるのあんたはん」である。

「夢の素」では、イーデス・ハンソン氏、野坂昭如(故人)、川上宗薫(故人)、井上ひさし(故人)、戸川昌子(故人)、佐野洋(故人)、五木寛之氏が登場する。刑事コロンボまで登場させちゃう。

「円盤芸者」では、戸川サンは歌手だから食えるが、芸者となるものも出てくる。森茉莉(故人)、城夏子(故人)、桐島洋子氏は芸者になるが、源氏名が禍してかお茶引き芸者である。

「古墳屋」では眉村卓氏が出てきたり、タイムマシンで邪馬台国へ、松本清張(故人)が出てきたりする。

そして、「人間接着剤」、「女の内閣」で終わりとなる。男は家庭に入るのが一番と現実とアベコベのことをするのが皮肉の効いたパロディとなる。このパロディを読んでいるとほのぼのとする。大阪弁がこんな楽しいとは思わなかった。標準語しか操れないのは残念でならない。田辺聖子さんのご冥福をお祈りしてこの拙い追悼文も終わりにしょう。

このメガネは小松サンのに違いない。

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