『普遍論争』(2008)

読書時間

山内志朗『普遍論争 近代の源流としての』平凡社、2008年

ライブラリーの本を手繰っていたら、出てきた本、山内志朗氏の『天使の記号学』を買う磁力はすでに『普遍論争』(2008年)にあったのか。改めて記憶のあてにならなさを思い知る。

本書は1992年に哲学書房より刊行されたものを平凡社ライブラリーに収録するにあたり加筆したものという。中世スコラ哲学への入門書として書かれたというが、入門書はまだ書けないという著者の謙遜はくみとる必要がある。そもそも、「中世スコラ哲学とは何か」という問いを考えてみなければならない。「中世哲学」と「スコラ哲学」はイコールではない。著者は「スコラ哲学」が20世紀になっても存在するといっているが、それが21世紀になってもなくなるわけではない。

副題にあるように「近代の源流としての」中世スコラ哲学への入門書を「私にとっての近世哲学入門」と著者が位置付けている。近代社会を考えるにための方法は一つ前に遡ることだろう。

「できるだけ」専門用語を極使わない方針で優しい口調で語りかけてくれる文体であるにもかかわらず、索引にある通り専門用語は避けられない。

第4章 二十世紀の中世哲学で「中世哲学がこれまでどのように批判されてきたか、なぜいま中世哲学が注目されているかについて、(省略)、これまでの経過を私なりに整理しておきましたので、その辺りに興味が引かれる方は、第4章を最初に読む」(P12)ことが勧められている。

中世哲学人名小辞典が143頁も付いていて、山内志朗氏の意欲を感じる。

コメント

タイトルとURLをコピーしました