『忠霊』を聴く

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『花もよ 第38号』ぶんがく社、2018年7月1日刊行

付録のCDの番囃子「忠霊」を聴く。東谷櫻子氏が「新作能「忠霊」をめぐる考察」を本文に書いており、「新作能「忠霊(ちゅうれい)」(原作浅見真健)は、忠霊顕彰会の要望によって太平洋戦争中の昭和16年、6世観世銕之丞(華雪)一門によって東京の靖国神社で初演された」とある。CDは読者から提供されたSP版からデジタル化したと脚注に記されている。

近代国家は国民皆兵制を採用して、戦争を行った。日本も日清・日露戦争戦没者慰霊碑などが、各地にあり、私の住んでいた船橋の大神宮には戦没者慰霊碑があった。日中戦争が始まると、大日本忠霊顕彰会が1939年に発足し戦死した兵士の遺骨を納めた忠霊塔を各地に建てる。そうした背景のなかで「忠霊」は作られた。

時代設定は当時である。忠霊塔に参拝した国士が老人に出会い、老人の言葉に従って靖国神社へ赴く。

老人(前シテ)/忠霊(後シテ)

男(ツレ)

国士何某(ワキ)

同行者(ワキツレ)

後場で、武人姿の忠霊が奮闘戦死の有様を語り、舞を舞って皇国の平安を祈る。能楽のプロが作った新作能であり、能楽の戦争協力はこういう形で行われたことを知る。

佐藤和道「戦時下の能楽—『忠霊』『皇軍艦』を中心に—」(『演劇学論集 65卷』日本演劇学会紀要、2017年)を読むと、『皇軍艦』は潜水艦乗組員の佐古少尉の謡曲「赤道神」に観世流の節をつけたものだという。

なお、『花もよ 第35号』には『皇軍艦』のCDが付いているので、バックナンバーがあるところで探してみたい。

「戦時下の能楽」

戦時下の能楽
J-STAGE

追記

『花もよ 第35号』を後日入手した。

2018-09-04『皇軍艦(みいくさぶね)』を聴く

皇軍艦(みいくさぶね)を聴く
『花もよ 第35号』ぶんがく社、2018年 の付録『皇軍艦』30分17秒 『花もよ 第35号』を神保町の古書店で見つけて、東谷櫻子氏の解説を読む。「太平洋戦争中、昭和18年に新作能として発表された「皇軍艦」は海軍の勇姿を讃え、国民を鼓舞する...

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